「ただいまー」
玄関の扉を開けると、いつもと変わらない闇が続いていた。
でも今日は気分が明るい。
あれからも一時間程結夢と語り明かして、もう上機嫌だった。
そこに見計らったように誠からメールが届いた。
相変わらずタイミングイイんだから。
あたしは結夢と誠の話をしている間も、家に帰る時も、ほとんど誠の事ばかり考えていた気がする。
階段を上りながらメールを開いた。
『結夢とのデートは終わった?』
一言なんて珍しい。
家に着いたらメールするって言ってたのに、心配してくれたのかな?
そのメールを見て、何だか寂しそうにしている誠の姿が目に浮かんで、ニヤけてしまった。
その想像した誠の姿が、飼い主の帰りを待つ犬を連想させ、胸がきゅっと締め付けられた。
電話してみようかな。
あたしは、ほとんど誠の名前で埋め尽くされている着信履歴を開き、通話ボタンを押した。
――トゥル
『もしもし』
ワンコールもしない内に電話に出た誠に、どーしようもなく愛しさを感じた。
「あははッ!出るの早ッ!」
そしてその忠犬ぶりに、思わず吹き出した。