「叶チャン……」
もう一度名前を呼び、叶チャンの顔の前に手を差し出す。
でも、その手は冷たく振り払われた。
「……出て行け」
叶チャンはあたしに背を向け、キッチンを出て行った。
あたしはその姿を茫然と見送った。
そして姿が見えなくなってから、制服のブレザーと鞄を持って、叶チャンの家を出た。
自分の部屋に入ると、一気に気が抜けた。
そして、怖くて、切なくて、涙が溢れた。
あたし、何やってんだろ。
誠と付き合ってんのに、叶チャンを受け入れようとした……。
もう後ろめたいどころじゃない。
――完全な裏切り。
それに、叶チャンはなんで。
なんであんな事……。
ムカついたって、何……。