でも、叶チャンがあたしと距離を縮めたいと思ってくれたのなら、それが例え身体の距離だけでも望んでくれたのなら……。
「叶チャン。あたし、叶チャンならイイよ……」
あたしは抵抗するのをやめ、叶チャンを抱きしめた。
あたしはもう、これ以上拒めない。
叶チャンがあたしを望むなら、あたしは応えないわけがない。
「叶チャンなら、イイよ」
力強く抱きしめ、もう一度、今度は抱きしめた力と同じくらい力強く言った。
それに対して、叶チャンはあたしのブラウスのボタンを外していた手を止めた。
「……馬鹿じゃねーの」
その声があまりにも弱々しくて、いつもの、低いけど透き通るような声とは全然違って。
――泣いてるのかと思った。
でも、その表情は見る事が出来ない。
叶チャンは俯いたまま、あたしから体を離した。
「……行けよ」
「叶チャン……」
こんな弱々しい声、聞いた事ない。
こんな震えてる叶チャン、見た事ない。
大きくて、いつも自信に満ち溢れた叶チャンが、小さくて儚く見えた。