そして唇が離れたかと思うと、そのまま首筋に舌が這われた。



なんで、なんで……



「やめて……お願い……」

最後の方は涙で声が掠れ、言葉は消えていった。


それでも叶チャンはやめず、叶チャンの大きな手があたしのブラウスのボタンに掛かる。


「叶チャン、やめてぇ……」

涙が頬を伝った。


「なんで、なんでぇ……」

叶チャンの顔はあたしの首筋にあり、表情までは分からない。

「俺と付き合いたかったんだろ?」

耳のすぐそばで、温かい吐息と一緒に叶チャンの声が聞こえる。

「彼女になりたかったんじゃねーの?」



そーだ。

確かにあたしは叶チャンの彼女になりたがった。

でも、こうゆう事を望んでいたんじゃなくて……。

こんな事だけ望んでいたなら、そんなの今までと何も変わらない。




身体は一つになれるのに、心は一つになれない。

いつも傍に居るのに、心までは近付けない。



あたしが望んでいたのは、心の距離が無くなる事。

彼女になりたかったのは、もっと叶チャンの心に近付きたかったからだから……。