叶チャンの顔が見れない。


叶チャンの顔はすぐ横にあるのに。


「誠に、心配掛けたくないし……叶チャンは、ただの幼なじみだし……」


「ふ〜ん」


更にあたしの手を握る力が強くなった。

「叶チャン、痛いッ」

そう言って思わず見た叶チャンの顔は笑っていて。

でも、それは昨日みたいな、口の端だけが上がっている笑いだった。



怒ってるの?


でも、何で?



その顔が怖くて、思わず顔を背けた。


「こっち向けよ」


叶チャンの骨張った細い指があたしの顎に触れ、叶チャンの顔に向けられた。

それと同時に、叶チャンの黒くて柔らかいミディアムヘアの髪が、あたしに降ってきた。





ううん、髪の毛じゃなくて……。




「これでもただの幼なじみ?」



――キス……。





唇が離れ、視線が絡み合う。


近すぎて、表情が分からない。


「な……んで……」


鼓動が早くなる。

息ができない。


「ムカついたから」


そしてまた、唇が触れた。


あたしはそれから逃れる為、身をよじり、顔を背けようとした。


でも、叶チャンの腕があたしの頭と肩を固定して、動けない。