「やっぱ夕飯作るの手伝おうか?」
「ううん、大丈夫。今日お母さん達、早く帰ってくるみたいでさ」
「そかぁ。じゃあまたメールするよ。頑張れよ」
誠はあたしにスーパーの袋を渡して、笑顔で去って行った。
あたし、嘘ついた……。
でも、ホントの事は言えないから……。
誠の姿が見えなくなるのを確認してから、あたしは自分の家には入らず、叶チャンの家のチャイムを押した。
すると見計らったようにすぐに玄関のドアが開き、叶チャンが立っていた。
「遅かったね」
「……ごめん」
昨日の事もあって、叶チャンの顔がまともに見れない。
「突っ立ってないで入れば?」
「……うん」
あたしは靴を脱ぎ、重い足を上げてキッチンへ入った。
「すぐ作るから」
ウサギのエプロンを取る為に棚に手を掛けた。
「彼氏、可哀相だね。嘘までつかれて」
棚に掛かったあたしの手を、叶チャンが掴む。
聞かれてた。
だから、玄関出るの早かったんだ。
あたしの手を掴んでいる叶チャンの手に、力が入った。
「何で嘘ついてまで来たの?」