「のんのお母さんは夕飯作ってくんないの?」
「うち、共働きでさ。両親共夜中にならないと帰ってこないから」
「じゃあ毎日のんが作ってんの?」
「ううん、毎日は作らないよ。近所のコンビニとかで買ったりしてる」
「そか……。寂しくない?」
「えッ!?全然寂しくないよ。もう昔からだし、親がいなくて悠々できるし」
うん、寂しくなんかない。
寂しいはずがない。
いつもの事だし、居ない方が好きな事できるし。
てか考えた事もなかったし。
もう、それが当たり前だから。
「……寂しかったら、俺が行ってやるよ」
誠は優しく笑った。
その笑顔を見たら、何だか泣き出しそうになった。
「大丈夫。でも、ありがとう……」
あたしは誠を裏切る事になるのかな。
こんな笑顔向けてくれる人を、悲しませちゃうのかな。
胸の痛みが、チクチクからズキズキに変わった。