「叶チャ……」
見られた。
叶チャンに。
「彼氏できて良かったね」
叶チャンは、そう笑って言った。
でも、目が笑っていない。
口の端だけで笑っていた。
見た事ない、こんな叶チャンの顔……。
「俺の彼女に手、出さないでね」
誠も笑って言ってるけど、目が笑っていなかった。
あたしを抱きしめていた誠の腕に、力が入る。
それを見て、叶チャンはまた口の端だけで笑い、家の中へ入って行った。
――怖い。
叶チャンを怖いと思う事なんて、今まで無かった。
いつだってあたしを助けて、慰めてくれていた人だったから。
あんな表情、見た事ない。
さっきの誠の表情も。
「のん大丈夫?」
「えッ、何が?」
慌てるあたしに、誠はまた、眉を歪ませて笑った。
「俺はのんが大切だから、のんが悲しむ事はしたくない。のんにはいつも、笑っていて欲しい」
「うん……。誠、どーしたの?」
「……何でも無い。じゃあまたね」
誠はそう言って手を振り、帰って行った。
どーゆう意味なんだろう。
あたしもぼんやり考えながら、家へと入った。