◆◇◆◇◆◇


夜が来る。
待ちに待った闇。妖怪としては昼間は動きずらい。


まぁ人間の姿をしているから問題はないのだが。


ぴょんぴょんと木から木へと移動していく。
下の者から危ないから止めろとは言われているがこの、風を切る感じが気持ちよくて止められない。


妖怪 九狐【キュウビ】


真っ白な九本の尻尾に同じように白い耳。
それなりに部下を抱えている。要は「若頭」と言った所だ。


皆狐の姿をしているが俺の様に白い尻尾と耳を持つ者はいない。
純血の印らしい。


ふとある木の上で止まった。
よく月が見える。


どうやら武家の屋敷らしいが、気にせず腰を卸す。


すると下から小さな声、


「誰か私を――…」


儚げなその声に思わず顔を下に向けた。


縁側に腰掛け月に手を伸ばす女。
その様子は幻想的で綺麗だった。
俺はその手に導かれるように
庭へと降りた。