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夜が来る。
待ちに待った闇。妖怪としては昼間は動きずらい。
まぁ人間の姿をしているから問題はないのだが。
ぴょんぴょんと木から木へと移動していく。
下の者から危ないから止めろとは言われているがこの、風を切る感じが気持ちよくて止められない。
妖怪 九狐【キュウビ】
真っ白な九本の尻尾に同じように白い耳。
それなりに部下を抱えている。要は「若頭」と言った所だ。
皆狐の姿をしているが俺の様に白い尻尾と耳を持つ者はいない。
純血の印らしい。
ふとある木の上で止まった。
よく月が見える。
どうやら武家の屋敷らしいが、気にせず腰を卸す。
すると下から小さな声、
「誰か私を――…」
儚げなその声に思わず顔を下に向けた。
縁側に腰掛け月に手を伸ばす女。
その様子は幻想的で綺麗だった。
俺はその手に導かれるように
庭へと降りた。