夜もふけ
空には見事な月が輝いている。
ふぅと溜め息をつき、今日あったことを思い出してみる。
今日は色々な事があった。
父様が連れてきた婚約者というお方。
お世辞にも整っている、とは言えない方だった。
ぶよぶよのお腹にこってりとした顔。
いかにも甘やかせられています雰囲気が出た人だった。
私は恋すら出来ないのか――…
一度でいいから’恋‘と言うものをしたかった。
恋い焦がれ、
その言葉にどれほど憧れたことか。
ゆっくりと月に手を伸ばす。
「誰か私を――……」
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