「凉…」


─────え?


顔を上げた瞬間、息が止まった。


「ねぇ…見てよ。あれって」


「う、うん。あれ…」


“凉菜じゃない?”


と、山西達が動揺する中、俺も突然のことに困惑を隠せずに自分の目を疑った。


だって、曲がり角を曲がって来た人物が…すっげー凉菜に見えんだよ。


「お前…今、どこにいんだよ」


『……優輔達の視線の先』


「な……んで?」


『車から脱走してきちゃった』


自然と凉菜へと足が向かう。どんどん速くなる足。泣き声が聞こえるケータイを閉じた。


もう一度、凉菜を抱き締めたい。


泣いているお前を放っておけるわけねーんだから。


てゆうか、さっきのままじゃ安心できないから。