「……優輔」


「何?」


ギュッ


視線が重なったと思ったら、今度は凉菜から抱き締められた。



「ありがとう」



凉菜にしては小さくて弱々しい声だった。そしてその言葉を言った後、両親が待つ車へ走り出した凉菜。


「ちょ…待てよ!」


声だけは出せたものの、体は動かない。俺は肩を掴まれていた。


「今は追い掛けないで」


「はぁ!?」


「凉菜の好きにさせて」


肩を掴んでいたのは山西だった。


「好きにさせてたまるかよっ!」


車のドアを開けて乗り込もうとした凉菜が一度だけこっちを見た。


下唇を噛んで、今にも泣き出しそうな顔をしている。


行かなきゃ。


アイツんとこに行かなきゃ!


でも、


バタン


凉菜が車に乗った途端、車は猛スピードで発進した。


俺は、凉菜の超ブサイクな顔を焼き付けるしかなかった。