「はい?」


平然を装い、そう返事をすれば。


「夏風邪って、バカが引くって言いますよね?のど飴、あげましょうか?持ってないですけどね」


佐藤はふふっ、としてやったと言うように笑ってから、また同じように突っ伏した。



もしかしてと思い、額に手をやれば。

あーあ、やっちまった。
つまり、そういう訳か。


立ちくらみは、ただの頭痛。

額の熱は、風邪の熱。

佐藤の笑みは、俺を負かした喜び。



その日の佐藤の居眠りは、特別、見逃してやった。