そう言えば、ここまで来た記憶がない。

私はどうやって、今こうしているのだろうか。


額に手を伸ばせば。

「……?」

水を絞ったタオルがのせられていた。


「うふふ、それねぇ、恭佑先生がやってくれたみたいよ」



“恭佑先生”? と一瞬誰のことか分からなかったけれど、あぁ、間宮先生の名前かと思い出す。


「どうして間宮先生なんですか?」

「ありゃりゃ、恭くん、かわいそうに。美桜ちゃん、覚えてないの?」


この人、間宮先生の次に苦手だ。

“美桜ちゃん”なんて、こんな年になっても言われると思わなかった。