ピアスを返してもらった私にはもうここにいる必要もない。

ここにいれば、ただただ先生のオモチャにされて終わりそうだから、ムカつくし。

何より、これ以上、彼と先生を比べたくなかった。



「私、もう帰ります。」

「あぁ、気をつけてな」

先生に言葉を背に受けて、ドアを目指す。


ドアに右手をやったところで思い出した。

ずっと握りしめていたから忘れていた。

これじゃあドアノブが握れない。



「せんせ」

そう呼んで振り返れば、先生はまだ私を見ていた。

「これ、ありがとうございます。」