くくく、と笑いを堪える先生に私はまたイライラする。

せっかく優位に立ったと思ったのに、結局は私の方がからかわれている。


「お前は甘いもん、足りてないんじゃないか?」

それは、この教師、やっぱり嫌いだと思った瞬間だった。


「うるさい!早く返して!」

自分でも、子ども染みていると思った。

けど、いつまでも先生に持っていられてもいいくらい、どうでもいいワケではないピアスだから。


あの人は、甘い物が嫌いだった。
あの人は、柑橘系の香りがした。
あの人は―――。


「…お願いだから、早く返して…」