「なんだ?」

しかも、いつもは丁寧な言葉遣いが崩れている。


「何でもないです」

それだけで、私の方が先生より優位に立っている気分だ。

先生の“いつも”の壁を取り壊して、“普通”の先生を引き出したのだから。

きっと、今のが本来の間宮先生なのだから。



そのせいか、私の“いつも”よりは余裕がある。

「先生、ピアス返してください」


校則違反なのだから、本当なら謝って返してもらうのが筋だと知っている。


私は右手を差し出しながら、ずかずかと、椅子に座る先生に近づいた。

「早く返してください、先生」