もういい大人が。
たかが高校生のガキの過去に、どんなに嫉妬しているんだか。
……馬鹿馬鹿しい。



本当は、もっと前からあいつのピアスには気づいていた。

あれは、日の長い夏のことだっただろうか。

職員の校舎の戸締まり確認の当番が回ってきたある日。

夜の7時と言えども、まだほのかに赤い空を、薄暗くなった教室の窓から見上げるやつがいた。


この学校で、施錠時間ギリギリまで残っている生徒なんてめったにいない。

誰だ、なんて愚問だった。

廊下から見た、その黒い人影だけで分かったのだから。