苦しそうに涙を浮かべた佐藤を盗み見て、儚い満足感が胸を充たした。

しかし、同時にある欲求が生まれた。

そして、それが勝った。


長い髪に隠した、佐藤の赤いピアスに触れる。



こんなもの、外してほしい。
佐藤の気持ちまで欲しい。

そんな浅ましい欲だった。






――ガリッ

佐藤はその瞬間、思い切り首を横に振り、キスから免れると、次には涙目で睨んできた。


俺がいっそのことならと望んだはずの、俺への恨みや憎しみがこもった涙だった。