そして玲子は、無意識のうちに、
カウンターにディスプレイされているブルーのボトルを守るように抱きしめていた。
アクアマリンと同じ色をしたそれは、ボンベイサファイヤと呼ばれる47度のジンで、
かつて誠と、リーシュコードオープンの祝杯を交わした特別なボトルだった。
「誠?!」
次の瞬間、胸に抱いたボトルを見下ろした玲子は、泣きながら笑っていた。
去って行ったはずの誠は、珊瑚礁の海よりも綺麗なボトルの中で、
香り高いジンの波にゆられながら悠々とサーフィンを楽しんでいる。
あっと言う間に波が巻き上がると、チューブと呼ばれる水でできたトンネルとなり、
小さな誠は、その中を滑り抜けるチューブライディングを完璧に決めた。