Ⅵ 夏の終わり
栄治がリーシュコードにやって来て五回目の冬、
誠の長かった夏の日々が、湘南での暮らしが終わりを告げた。
それは、めずらしく小雪舞う中にクリスマスソングが流れる12月の初めのことだ。
長野の旅館あらふじの板長、鉄平と張る頑固親父で鳴らした誠の父が、
脳梗塞で倒れたという知らせが、突然リーシュコードに舞い込んできた。
誠は、驚くほど冷静に、とりあえず一週間休みをくれとだけ言い残し、
雪深い故郷へと旅立っていった。
今が海水浴客であふれ返る真夏ではなくてよかったと、不幸中の幸いに胸をなで下ろしながら。