そのとき、玲子の熱いまぶたの裏に、リーシュコードを、鉄平と玲子の家を出て行く瞬間の栄治の震える細い肩がよみがえる。 さよなら、俺のパラダイス。 栄治は、声には出さずに、でも確かにそう言ったのだ。 玲子は、ポケットの中で、誠からの最後の電話を受けた携帯をぐっと握りしめる。 そしてあのときの栄治と同じように、血の味がするまで唇を噛みしめ、声には出さずにつぶやいた。 ……ごめんね、栄治。