リーシュコードでの仕事中は、どこか神経を張り詰めていた栄治も、
家に帰ってきたときには、年相応の無防備な笑顔を見せてくれたのだ。
たとえば庭の縁側で、サーフボードにワックスを塗りながら。
居間で鉄平と並んで、サーフコンテストのDVDを見ながら。
誠のピックアップトラックの助手席から、水着姿で手を振りながら……。
「……シャンパン空いちゃったね。次はなに飲む?」
やがて玲子は、そう言うと栄治に背を向けてバックバーを見上げた。
瞬きを繰り返し、睫に絡みついた涙の雫を蒸発させようとする。
あの頃の、灼熱の日々の思い出の中には、誠の気配が強すぎた。