「あんまりうるさいから、私、言ってやったことあるもの。

もしかして、とーさんといっしょに住む栄治にヤキモチ妬いてるの? って。



 だって、栄治がうちにいるのなんてほとんど寝るときだけだったじゃない? 

 もめごとの起こりようがないよね」



 玲子は、ボトルに残っていたシャンパンを注ぎながらおかしそうにそう続けた。



 あの頃栄治は、リーシュコードで働いているとき以外はいつもサーフボードと共に海に出ていて、

疲れ果てると小さな木造2階建ての鉄平と玲子の家に帰ってきた。 



 やもめ暦の長い鉄平は自分のことは自分でしていたし、

仕事に夢中な玲子は昼食も夕食もリーシュコードですませていたから、



もともと下宿屋に近かったその空気に、栄治はすぐに何の違和感もなく馴染んだ。