「……そっか。ありがとね。来てくれて」 玲子は、胸の痛みをこらえてうなずいた。 あの頃栄治を悩ませ続けた両親は、 栄治が中学校を卒業する前に離婚して、今はそれぞれの相手と別の家庭を作っていた。 「それに、このカウンターで飲むの、あの頃の俺の夢だったしさ」 栄治は、ニスが光る一枚板のカウンターにもたれ、バックバーを見上げながら満足そうな吐息をもらす。