玲子は、今でもよく覚えている。



 あの頃、栄治の細い体には、

決してサーフィンでの怪我ではあり得ない場所に、痣やすり傷が日替わりで現れては消えていた。



 栄治の身柄を引き受けると宣言した鉄平は、担任の教師や両親を根気よく尋ね、

中学1年生のアルバイトをついに認めさせたけれど、



そのとき、泥酔した栄治の父親から投げつけられた酒の空き瓶で、額をぱっくりと割っていたのだ。


 
 そんな家庭で育った栄治は、学校生活すらも義務教育を卒業するためのものと割り切って、

リーシュコードでの皿洗い以上に淡々とそつなくこなしていた。