「いや、そうしたいんだけどさ。

俺、ここでのんびりしてると誠さんに怒鳴られそうな気がするんだよ。

栄治、さっさとしろ! できないならサーフィンなんて辞めちまえ! ってさ」



 栄治も自分の言葉に吹き出すと、カウンターに肘をついて懐かしげに目を細める。



 あの頃、リーシュコードで働き始めた栄治は、まっしぐらにサーフィンにのめり込んでいった。



 その目には飢えを満たす獣の一途な欲望があふれ、

華奢な身体は瞬く間にブロンズの日焼けを増していく。



 だけど、書き入れ時を迎えたリーシュコードは、

洒落にならない忙しさで、皿洗いと掃除が主な仕事の栄治ですら、日に何度も誠の罵声を浴びていた。