「いらっしゃい」



「……うわ、懐かしい。あ、片付け、手伝おうか?」



 潮騒と共にフロアに現れた栄治は、

かつての職場で客として扱われている自分に戸惑っているのか、落ち着かない目をしていた。



 長い脚をもてあますようにカウンターのスツールに浅く腰掛けると、奥の厨房をのぞき込む。


 
「お客さんがなに言ってるの。

20歳になったんだから堂々と飲みなさいよ」



 玲子は、スツールに座ると脚が宙に浮いていた頃の栄治を思い出し、笑いをこらえて言った。