栄治の濡れた瞳は、八方ふさがりの現実の中、

突破を狙って玲子を見つめている。



「……親の世話には、なれないの? なりたくないの?」



「なりたくない」



 意地悪な問いかけに、栄治は即座にこたえた。



 逆境に流されない意思の強さ、欲しい物は自分で手に入れるプライド。



 まだ声変わりもしていない栄治は、確かにサーフィン向きの性格をしている。



「それなら、私の前で立ってみせて。でも、チャンスは一度だけ。いい?」



 次の瞬間、玲子は、自分の内側のなにかに促されるようにその言葉を口にしていた。