「ところで栄治、その痣、家、学校?」 そのとき誠は、顔色も変えずにそうきいた。 玲子は、はっとして、もう一度栄治に冷静な眼差しを向ける。 よく見ると、小柄な栄治は痛々しいほど痩せていて、 白いタンクトップから伸びた華奢な上腕は、赤、青、黒の痣で派手に彩られていた。 「……家。無職のオヤジ。ギャンブル中毒」 栄治は、無表情でこたえる。 そのとき、玲子の左膝で、心臓で、なにかが微かな音をたてて動いた。