「……歳、いくつ?」



 やがて玲子は、目の前の小さな少年に、栄治に再び声をかけた。



「もうすぐ13歳、中1です」



 栄治は、はきはきとこたえる。



 中学校1年生。その頃の玲子は、パンチアウトの頑固オヤジの愛娘として、

湘南のロコサーファーの間ではまさにお姫さま扱いを受けていた。



 どのサーフポイントでも歓迎されたし、

サーフィン専門誌の取材を受けたことも一度や二度ではない。



 玲子が、自分の生まれ育った環境がサーファーとしてどれほど恵まれているのかに気づいたのは、

誠が故郷を飛び出した歳になって進路を考えたときだった。