「お願いします。俺をここで働かせてください」



 栄治がリーシュコードに現れたのは、

そんな灼熱の日々に最初の夏の日差しが照り始めた頃のことだ。



「玲子ママ、頼む。こいつ皿洗いにでも使ってやって」



 驚きで目を見張る玲子に、

拾ってきた犬に水をやってとでも言うように、誠はあっさりと言った。




 全く、どうしていつもナマモノを拾って来るわけ!? 



 そのとき玲子は、声に出さずにそうつぶやいたような気がする。



 誠の情の深さと面倒見の良さは、昔から限度を超えていて、

こっそり拾ってきた捨て犬や捨て猫のせいでアパートを追い出されたことは、一度や二度ではない。



 子供の頃は、誠といっしょに犬や猫も自分の部屋にかくまってあげていた玲子だけれど、

さすがに生きた人間の男の子となるとそれまでとは事情が違う。