玲子は、今夜の仕事の充実をいつものように海に祈ると、 メニューの確認のために厨房に向かう。 そのとき、ブラックジーンズに包まれた細い腰に伝わる振動にふと気付き、足を止めた。 『新藤誠』 そして携帯の画面に現れた文字を目にした瞬間、 意思を秘めた切れ長の瞳が柔らかなうるおいで満たされる。 「もしもし、まこ兄?」 玲子は、弾んだ声でそう言うと、自分の言葉に驚いたように誰もいないフロアを見回した。