「あ、やっぱり知ってた?」



 栄治は、照れくさそうに頭を掻く。



「とーぜん。私の情報収集力をなめちゃいけない!」



 玲子は、強気に笑って胸を張った。



「志保ちゃんのお腹が大きくなったから、大学の卒業を待って籍入れたんでしょ。



 それで今栄治は、志保ちゃんのお父さんたちといっしょに伊太利亭で働きながら、

昔誠もやってた調理師試験の通信教育を受けてる。

 一時期、常連の間で話題になってたからね」



 伊太利亭というのは、志保の父がオーナーシェフを務めるイタリアンレストランだ。



 栄治の両手には、調理師見習いらしく、

幾つもの火傷と切り傷の痕が修業の証として刻まれている。