Ⅲ 三年ぶりの再会
澄んだ群青色を帯びてきた空のてっぺんに、
薄く繊細な月が彫金細工のように引っかかっている。
薔薇色と茜色の雲を従えて水平線に近づいた太陽からは、
砂金を敷き詰めたような道筋がビーチに向かって伸びてきていた。
最後までねばっていた白いトランクスの少年も、
なごり惜しそうにボードを抱えて砂浜に上がる。
リーシュコードのブルーのネオンが、
汗を流したサーファーたちを引きつける時刻が近づいてきていた。
物思いから覚めた玲子は、耳元に当てていた携帯をしまうと、
遅番のスタッフを頭の中で確認しながら、海に背を向けドアに手を伸ばす。