それから玲子は、ゆっくりと心の落ち着きを取り戻し、

手負いの獣のような態度も改め、リハビリにはげむようになっていった。



 鉄平は、二度と長野行きの話を持ち出すことはなく、退院して家に戻った玲子に、



ジャンキーの両親から支払われた慰謝料で、ちょうど店が一軒建ちそうだ、

と、ニヤリと片頬を上げて告げた。



 サーファーたちの心と胃袋を満たす憩いの場を作ること。



 玲子が幼い頃から暖め続けていた夢は、

皮肉なことに、生涯残る歩行障害と引き替えに叶えられたのだ。