「いいか、玲子、何かを失くしたときには、別の何かを必ず自分で手に入れろ。
たとえもう一度それを失くしたとしても、その経験だけは両手に残る」
やがて哲学者のようにつぶやいた鉄平の言葉通り、
玲子は、苦い潮水の洗礼の中で母を亡くした痛みに慣れていき、
ゆっくりとその笑顔を取り戻していった。
玲子とサーフィンの黄金時代がやってきたのだ。
気がつくと玲子と誠には、鉄平と誠との間にも見える年齢を超えた絆が生まれ始めていた。
同じものに、湘南の海とサーフィンに恋をした仲間同士。
伝えられた波の知識やビーチでのマナーは、
やがてサーファーとしての生き方そのものとなり、
それは玲子がセーラー服に身を包む頃には、2人を分かち難く結びつけるようになっていた。
お互いの恋人が、従兄妹同士だとは知りながら嫉妬の炎を燃やすほどに。