玲子が初めてボードを抱いて鉄平と誠と共に海に出たのは、9歳の夏の初めだ。



 それは人生で一番悲しい夏、母を癌で亡くしたときのことだった。



「玲子、お前が俺よりサーフィン上手くなったら、

いっしょに美味いもん出す店作るんだからな。約束だぞ」



 真新しいボードを抱えた玲子に、海に入る前、誠は必ずそう言った。



 小指と小指を絡ませながら。