玲子は、出窓に置いたブリキの灰皿で煙草を消すと、
彼らのように波に挑んでいた頃の自分を思い出し、
薄く紅を引いた唇にふと懐かしげな微笑みを浮べた。
ランチタイムの後の念入りな掃除で、板張りの床は艶やかに光っている。
大きく伸びをした玲子は、テーブルに上げられた椅子を下ろしていった。
カウンターを磨き上げ、ガラスのランプと灰皿をセットしていく。
青いブックマッチには、波頭のような筆記体で
『レストハウスLeash Cord』と記されていた。
リーシュコードとは、サーファーの脚とサーフボードとをつなぐ紐のことだ。