「……初恋は実らない……かよ! 先輩、ガード固ってぇ!!」



 やがて天井の扇風機に向けて一声吼えた栄治が、

軽やかに立ち上がると、カウンターのスツールに舞い戻ってくる。



 そして、ぽつり、ぽつりと、

青春ドラマのような志保との出会いを語り始めた。



 少しバツが悪そうな、だけどとても嬉しそうな、

そしてかなり照れくさそうな、なんとも複雑な眼差しをして。



 だけど……栄治のその笑顔は、

ミルクティーのお代わりをねだる頃には、

玲子の知るいつよりも幸せそうにとろけていった。