「……ね、栄治。
志保ちゃんとの話、私、まだちゃんと聞いてなかったよ。
どこで会ったの? どんな所をいつ好きになったの?
話してよ、最初から全部」
玲子は、リーシュコードの玲子ママの微笑みを浮べると、
さらさらと揺れる金茶の髪を優しく梳き、
左脚をかばいながら立ち上がる。
そしてカウンターの向こうに回り込み、
栄治が好きだった熱いロイヤルミルクティーを淹れ始めた。
胸の内側からあふれそうな涙は、
店主のプライドにかけて一滴もこぼさずに。
「どうしたの? 早くこっちに座ってよ」
誠と別れてまで1人帰ってきた、ここが玲子の選んだ場所なのだ。