「……家族ごっこの次は、恋人ごっこ?」



「そう。きっとまた楽しいよ」



「……ん、無責任でいられるしね」



 玲子は、そうつぶやくと、震える金茶の髪をさらさらと梳いた。



 栄治の髪からは、あの頃と同じ太陽の匂いがしていた。



 無防備で、無責任で、だからこそ無邪気に輝いていた、灼熱の黄金時代と同じ匂いが。



 玲子は、胸を狂わせる痛みに、血の味がするほど唇を噛みしめる。



 人は、どうして輝いた時代に別れを告げて、

それぞれの痛みを引き受ける大人にならなければいけないのだろう。