「……先輩、慰め合おうよ俺たち。2人とも、大事なもの失くしたよね」



「志保ちゃんが好きなのに?」



「だけど、あいつには一生分からない。

 サーフボードは俺の一部だったんだ」



 そしてその言葉と共に、玲子の左膝の古傷が、失くしたサーファー時代を惜しむように痛み始めた。



 それは確かに、栄治の痛みと同じうずきを持っていた。



「……先輩なら分かってくれるよね。

 やりたくて気が狂いそうだよ。

 大好きだったんだ、死んでもいいと思うほど」



 玲子の胸を、狂おしいほどの囁きが熱く溶かしていく。



 それほど求めているものは、玲子なのか、サーフィンなのか。



 おそらく栄治自身にも、その区別はついていないのだろう。