玲子、大丈夫か? あのときのこと思い出したのか? そのとき誠の低く錆びた声が、耳元でふとよみがえる。 玲子は、ポケットから携帯を取り出すと、それをぐっと握りしめた。 「……まこ、と」 やがて噛みしめられた唇が微かに動き、苦しげなつぶやきが伏せた睫を震わせる。 そのとき左脚の古傷が、ずきり、と微かな音をたてて痛んだ。