「やめて。放しなさい」



「安心してよ、優しくする。

 2回目は先輩からねだるよ。俺とやった女はみんなそうだから」



 耳元で吐息と共に響く囁きは、

リーシュコードを出てからの栄治の生活の荒みを感じさせた。



「最初から、そのつもりで来たの?!」



「まさか。先輩が幸せなら、いい子で帰るつもりだったよ。

 でも、あんたは期待してた。たとえ自分じゃ意識してなかったとしても」



「違う!! どうして?!」



「それならなんで、誠さんがあんた以外と結婚するなんて俺に話したんだよ?! 

 俺が、俺がどんな思いで、あのときあんたから離れて行ったと思う?!」



 栄治は傷ついた子供の眼差しを浮べると、玲子に一心にすがりついてきた。