けれど言われてみれば、いくらでも思い当たることはある。 栄治は、アパートの下見だの引越しの準備だので、 あれ以来リーシュコードには出勤しなかったし、鉄平と玲子の家で眠ることは一度もなかった。 夜になると、まだ解約していない誠のアパートに1人閉じこもっていたのだ。 玲子はそれでも、飲酒禁止の約束を破った栄治は家に入れられない……という、 鉄平の言葉を何の疑いもなく信じきっていた。