……栄治は当分そっとしておいてやれ。
リーシュコードとの別れは、あいつにとって辛い経験だ。
同時に、サーフボードとナイロンバッグだけを手にした栄治が、
曲がり角の向こうに消えたとき、鉄平が玲子の携帯を取り上げ、
そこから栄治のアドレスを消去したことを思い出す。
「でも先輩、本当に、全然変だと思わなかったの?
あの中途半端は許さない鉄平さんが、進んでリーシュコードの後始末に走り回ってたのに」
栄治の言葉に、玲子はみじめにうなずいた。
鉄平は、一人娘の結婚に舞い上がる親馬鹿の姿を完璧に演じていた。
栄治と、誠と、そして誰よりも、初恋を叶えたばかりの玲子のために。