ⅩⅠ 帰ってきた場所 栄治の針のような眼差しを背中に感じながら、玲子は、 身動きひとつできずに、遠くで光る漁り火をただ見つめていた。 あの日の栄治の荒れようを、決して忘れていたわけではない。 ただ……。 そう、玲子は、栄治の真っ直ぐな気持ちを意識するのが怖かったのだ。 思えば栄治の瞳は、いつだってこれ以上ないほどの輝きをたたえて、 玲子の後ろ姿をいつも追い続けていたから。