「よけられただろ?! なんで殴らないんだよ?!」
だけど悲鳴のような叫びに恐る恐る目を開けると、
誠の巨体が腹を押さえて床に崩れ、荒い息を吐いている。
その側では、いきなりの活劇で再び酔いが回った栄治が、
思い通りに動かない身体をもてあまして無様に尻もちをついていた。
「……いや、もう俺はお前に敵わない。
栄治、ビーチでの喧嘩沙汰の仲裁はまかせたぞ。
鉄平さんに無理させないでくれ」
そして誠のその言葉を聞くと、栄治は、細い身体を胎児のように丸めて泣き出した。
「……どうして、みんな、俺を置いて行くんだよ」
それは、一度親に捨てられた子供の本音だった。