「栄治、私たち、結婚することになったの。

 ずっと誠のこと好きだったから、長野にいっしょに行くの」
 


 玲子は、栄治の目を正面から見てきっぱりと言った。



「……嘘だろ。先輩、俺を無職の宿無しにするわけ?!」



 栄治はよろよろと身を起こすと、捨てられる寸前の子犬のような目で玲子を見上げる。



「……おめでとうって、言ってくれないの?」



 玲子は、呆然とつぶやいた。



「その話は後だ。栄治を休ませてやれ、ほら」



 厨房からスポーツドリンクのボトルとバケツを持って現れた誠が、

玲子の肩に手を回し、だだっ子に言い聞かせるように囁く。